大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和30年(ネ)964号 判決

控訴人 原告 北山款二又は耕司こと北山勘次

被控訴人 被告 神戸電工株式会社 代表清算人 伊藤平次郎

主文

原判決を取消す。

本件を神戸地方裁判所に差戻す。

事実

控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二十九年二月八日、その本店にて開催した臨時株主総会においてなした、一、清算人及び代表清算人北山款二を解任する、二、清算人久国輝蔵、同桜本広太の各辞任を承認する旨の決議はいずれもこれを取消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を、被控訴人は「本件控訴を棄却する、控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出援用書証の認否は、原判決事実記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

控訴人の本訴請求の原因は、控訴人は昭和二十八年七月十七日被控訴会社の清算人及び代表清算人に就任したものであるが(但し控訴人は被控訴会社の株主ではない)昭和二十九年二月八日、被控訴会社の本店にて開催された臨時株主総会において、前示のような決議がなされ、控訴人はその地位から解任された。しかしながら右株主総会は招集権なきものによつて招集されたものであり、仮りにしからずとするも、右総会の招集は商法第二百三十二条所定の、会日より二週間前に、各株主に対して、その通知を発していないのみならず、右通知には会議の目的たる事項を記載していないから、前示決議は取消さるべきものであるというにある。そしてこれに対して原審は株主総会において清算人を解任する決議があつた以上、たとえそれが違法であつても、訴をもつてその取消を主張し、該判決が確定するまでは、清算人の資格を失うものというべく、ただ右決議取消の判決が確定した場合に、初めに遡つてその資格に変動がなかつたものとなるにすぎないから、控訴人は本件総会の解任決議により、被控訴会社の清算人及び代表清算人の資格を失つたものと認め、その資格において、本訴を提起する適格のないものと断じ、これを不適法として却下したものである。

しかしながら、もし原審の見解の如しとすれば、違法な株主総会の決議によつて、解任された清算人は、自らの手で右決議の取消を求めることができないこととなり、結局右清算人は、商法第二百四十七条、第四百三十条によつて与えられた株主総会の決議取消訴訟の原告たる資格を、違法に奪われるに等しいこととなり、右原審の見解は到底肯認することはできないものといわざるを得ない。従つて、右のような清算人は、商法第四百三十条にいわゆる清算人として本訴を提起する資格のあるものというべきである。(もつとも違法に解任された清算人を、なお清算人として取扱うのは商法第二百四十七条、第四百三十条の関係においてのみであるから、本件において、同法第二百六十一条の二、第四百三十条を適用して被控訴会社の代表者を定める必要はない。)

よつて民事訴訟法第三百八十六条、第三百八十八条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 大野美稲 判事 石井末一 判事 喜多勝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例